【太平記】第7回「悲恋」〜あらすじと感想
奥州の乱は止まず幕府軍も戦果をあげられないままでいた。
一方、花夜叉一座に帰ってきた石は、藤夜叉が身ごもっていることを知る。久しぶりの花夜叉一座だったが思わぬ知らせにショックを受ける石。
右馬介は、藤夜叉のことは貞氏にだけは伝えていると高氏に告げる。登子との縁談が控えている今やはり藤夜叉には会ってはならないと。それは貞氏の意向でもあった。
一方長崎円喜が足利邸に訪ねてくる。「あれだけ足利を潰そうとした円喜が何しに来るんだ」と足利家は騒然。特に直義は激昂「斬る」とまで言い出す。
円喜の用向きは赤橋と足利の婚姻の祝いの言葉からはじまったものの、本当の目的は奥州の乱を鎮めるための足利への出兵命令であった。
北条と足利が身内になるということで、幕府のために奥州の乱を抑えるよう足利に兵を出すよう要請する。
「兵を出してはいただけないか6千ばかりの兵を」早口に穏やかに。静かに貞氏を恫喝する長崎円喜。
貞氏は動揺しつつ「すぐにはちょっと…ふた月かかるか、み月かかるか」と濁すも「お待ち申そうよ」と意にかえさずに答える円喜。目は笑わない円喜。
長崎円喜が帰ったあと、勝手な言い分に腹を立てる貞氏と高氏。しかし怒りは持ちつつも静かに耐える貞氏。そんな父に納得がいかない高氏。「登子との縁談を白紙」にしてでも出兵を断るべしとの高氏であったが、貞氏は「そういもいくまい」と告げる。
高氏は声を荒げてなぜかと問う。
佐々木道誉の屋敷で、石は藤夜叉から身ごもったのは高氏の子であると告げられる。
藤夜叉は「石の嫌いな人を好きになってしまった。ごめんね」と告げる。
石は「足利は親の仇」と全く歓迎は出来ない。
これは石がつらいなあ。石にとって足利は親の仇(と思い込んでいる)最悪の相手ですから。
言葉の節々から藤夜叉に対して兄妹として育った者のそれ以上の感情を持っていることがわかる石。石にとっての「悲恋」の回でもあります。
しかし石から高氏は北条の姫を嫁に取ることを知らされる藤夜叉。すると高氏の元に行くことは出来ないと悟ったのか「ここに居ても仕方ないから此処を出たい」と、石にここから連れて逃げてくれるように頼むのだった。
石は藤夜叉の願いを聞き、藤夜叉を連れて佐々木道誉の屋敷から密かに出ようとする。道誉の配下の武士に追われるが、黒装束の男(右馬介)が助けに入り斬り合いになりなんとか屋敷から脱出する。
石と離れ離れになってしまった藤夜叉。
屋敷の外で藤夜叉の前に現れた高氏。
藤夜叉を馬に乗せて駆ける。藤夜叉はこのまま都に帰りたいと願う。
藤夜叉に側室として足利へ引き取ることを提案するも藤夜叉は拒否する。
高氏と北条の姫の縁談には耐えられない藤夜叉。一緒に都へ行きたいと高氏に頼み込む。
もし高氏と一緒に行けなければ子供は一人で育てると言う。
高氏は今すぐに都へ行けぬが明日の夜もう一度ここに来てほしいと答えた。
高氏が藤夜叉を馬に乗せて走る場面はその音楽の儚さもあってとても美しい場面です。
高氏にとっても藤夜叉にとっても忘れ得ぬ悲恋の思い出となっていきます。
足利屋敷に戻ると新田義貞が奥州出兵前の挨拶に訪れていた。
「我らは足利殿と違って貧乏御家人」といつものように自らを自嘲する義貞。
地図を見ながら貞氏は、「新田は足利の腹を探りにきたのだろう」と語る。
新田義貞と何を話し合ったのか。おそらく北条憎しの思いで話をしたに違いない。そして同時に北条との縁組も進める父。
そんな父の腹の内がいまいちわからない高氏は思い余って「父上は何を考えておられる!その次第ではこの高氏にも覚悟がございます!」と叫ぶ。
すると貞氏は「北条と戦う覚悟か?赤橋登子殿を迎える覚悟か?どこぞの白拍子と夢の如く生きていく覚悟か?どの覚悟だ!!」と高氏を一喝する。絶句する高氏。
「覚悟はむずかしい…」と自分に言い聞かせるように語る貞氏。
足利の命運。万を超す者の命運を握っている足利の頭領としての運命の厳しさを高氏に語ったのだった。
連署の金沢貞顕は御家人の兵を集め奥州へ派兵することは危険だとの意見であった。
赤橋守時は北条の尻拭いは北条だけでするべしとの意見。この意見に今回の御家人派兵は白紙に戻った。
守時は館に戻り登子に縁組の日取りが決まったことを告げる。
嫁ぐ登子に、この縁組が決して単なる縁組ではなく「鎌倉を守るのはそなたと守時になるやもしれん」と言う。守時の重い覚悟が表れた言葉だった。
一方そのころ高氏は約束通り藤夜叉に会いに馬を走らせるのでした。
父に昨日「どの覚悟だ!!」と一喝されたばかりでしたが、藤夜叉と約束したもんね。
今日のハイライト
高氏と藤夜叉の逃走劇
貞氏が高氏を一喝した場面とと迷うところですが、ここはタイトル通り「悲恋」であるこのシーンが自分的にはハイライト。
この大河ドラマで描かれる高氏の青春を象徴する大切な場面だと思います。
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