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【太平記】第1回「父と子」NHK大河ドラマ感想

太平記

【太平記】第1回「父と子」あらすじと感想

ドラマが始まる前、冒頭に当時の時事であるベルリンの壁崩壊とドラマの舞台である鎌倉幕府崩壊〜室町幕府成立をなぞらえて「時代の転換期」というキーワードが語られる「太平記」。
現代でもコロナ禍があったり世界では以前として戦争も起こっている時代、「時代の転換期」というキーワードは普遍性のあるテーマなのかもしれません。


テーマ曲は三枝成彰さん作曲。おどろおどろしく不穏に始まり一気に加速し盛り上がる、不気味で猛々しく美しい曲です。
オープニングでは天狗が炎をバックに顔を見合わせていて、その中に「太平記」のタイトル。
古典太平記での冒頭で、崇徳上皇の怨霊である天狗らが「そろそろ都に乱を起こしてやろう」と相談をする場面があるのでこのオープニングはそこからイメージされたものだと思うのですがそれに気が付いた時は思わず膝を打ってしまいました。

初回は90分の拡大版。冒頭は弘安8年(1285)から。まだ尊氏が生まれるずっと前。鎌倉幕府の有力御家人である安達泰盛が討たれる霜月騒動が描かれる。
宴に興じる安達泰盛が討たれ権力の座が動いていく。

恐らく大河ドラマで霜月騒動が描かれるのは太平記しかなさそうです。
鎌倉幕府内の暗い権力闘争と、物語当初の大きな壁である長崎氏に権力を持っていく説明として丁寧に描かれています。


二十年が経過し、安達の次に権力者たちの標的となっているのは足利。最大の御家人である足利氏の力を削いで、ますます北条得宗家の力を強めたいという思惑がありそうです。

当主の足利貞氏の元に、権力争いで敗れ滅ぼされた吉見氏の残党、塩屋宗春が逃げてきた。匿えば北条に追求されてしまう。貞氏は何とか子供一人を匿いつつもそれが限界で残党一党は追払い見殺しにしてしまう。

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」でも描かれましたが、御家人の集合体である鎌倉幕府の政治体制にとって権力争いとは常に付きまとう宿命みたいなものなのでしょうか。

フランキー堺さん演じる長崎円喜の権力者っぷりと言うか悪役っぷりは良い意味で非常に嫌味であり、しかしながら執権の管領の立場であるものの権力者の傘を着るような小物感はありません。何とか北条と戦いたいものの堪えるしかない足利貞氏演じる緒方拳さんの苦しい表情が辛いシーン。


さらに時が過ぎ、後の足利尊氏の初登場シーンは又太郎の名であった頃の少年時代。足利庄で弟直義とわんぱくに育っていると思われるシーンです。新田の庄で「御神体」と崇められているものがどんなものなのか、天罰を恐れずに「御神体」の中身を見に行く。祠を開けて盗み見た御神体の正体はただの木切れでした。

「皆が崇めていたものの正体は実は薄汚れていて、つまらないものだった」というこの場面はずっと尊氏の心の中に宿る重要な場面です。
有形無形の伏線になっていきます。


その帰りに出会う隣の新田の庄の新田小太郎(後の義貞)。喧嘩、というか小競り合いがあり「北条の天下がいつまでも続くと思うな。北条は平氏。我らは源氏。平氏の犬に成り下がるでないぞ」と又太郎を一喝し去っていく小太郎。この出会いも尊氏の心に強く刻まれることになる。
さらにここでかつて貞氏が救った子供であった一色右馬介と出会う。右馬介は足利に救われた恩を忘れず足利のため、尊氏の為に献身していくことになる。


舞台は変わって美濃国。「悪党」と呼ばれる村などを襲っていた武士集団に母親を殺された少年が花夜叉一座という旅芸人に拾われる。名前はと言った。花夜叉一座には同じく親を亡くした藤夜叉という少女がいた。
悪党が落としていったものから「これは足利の所領のもの」と教えられ、石は足利は仇であると強く恨むことになった。
場面転換も目まぐるしく、これからの登場人物の紹介と生い立ちをたっぷりと伝えてくれます。


執権北条高時を烏帽子親として又太郎は元服。高時の高の字をもらい「足利高氏」となる。
将軍御座所の格子番として出仕し何ともうだつの上がらない日常を送っている高氏。蹴鞠や闘犬などの遊興にふける北条高時。家臣などを集めて闘犬見物をしていた高時はあくびをしていた高氏を見つけ闘犬を引くように言う。
無様に闘犬に引きずられ、着物を食いちぎられ無様に逃げ惑う高氏に高時も見物人も大笑い。衆人の前で大恥をかかされた高氏だったが、その見物人の中で新田義貞がじっとこちらを見ているのに気が付く。

高時の烏帽子親としての登場から、闘犬の場面では暗愚というか得体の知れない人物でろうことが伺える大切なシーンでした。もう第1話目にして鶴ちゃんの配役がバッチリでしたね。
格子番で「蹴鞠なんて何が面白いんだ。武士らしくない!」とボヤく六平直政さん演じる宍戸知家もいい味を出してました。


心身ともにボロボロの高氏が館に帰ると「北条から嫁を取るのは反対だ」と直義に言われ戸惑う高氏。勝手にそんな話が進んでいるのかと呑気な母、清子に問い詰めるとあっさりその話はなしということに。

清子が食べたのは京都の実家から届けられた「おこし」
こんなところにも清子の育ちと、張り詰めた足利家を和ませてきたであろう気性がうかがえて好きな場面です。


高氏は先程の屈辱に震え、「こんな鎌倉あああ!!!」と絶叫。北条に頭を下げるのはもう嫌だと打ち明けると、父の貞氏も同じ気持ちであると打ち明ける。その後「清子の里のおこしはまことに美味い」と一口。

呑気な母に「古今六帖の写し」を北条一族である赤橋守時に返してきてほしいとお使いを頼まれた高氏。そこで出てきた赤橋守時の妹、登子の美しさに見とれて初回は終了。

貞氏が「おこし」をひょいと口にする場面は、北条からの屈辱に耐えつつも、その怒りに身を潰されないように自分自身を受け流しているようにも見え、三十年という月日を耐えてきた貞氏だからこその処し方なのかもしれません。
しかし屈辱に三十年耐えてきた貞氏と、それも当然知っている高氏。
お互いの北条を何とか倒したいという心の奥底を確認した大事な場面でした。

そして登子を演じる沢口靖子さん。
大河ドラマ「秀吉」でも沢口靖子さん演じるねねの美しさに藤吉郎(秀吉)が見とれたところで終了する回がありました(これも初回だったかも!?)そういえばこちらでも高嶋政伸さんは主役の弟の秀長役でした。このキャスティングは鉄板ですね。

しかしものすごい濃さの初回でした。戦国時代ほど状況がお馴染みではないだけに、足利家の立場や思惑。北条の中の長崎円喜の権勢と情報が非常に多いです。
それでも各役者さんの演技でスッと太平記の世界に入っていけます。

この太平記までは基本的に最終回まで怒涛の勢いで進んでいくので感想を書いていくのも楽しいです。

今回のハイライト


情報量が多過ぎて見どころしかない初回なのですが、長崎円喜、北条高時と足利一族に圧をかける敵役の存在感とそれをどうにかしたい、足利貞氏、高氏父子。また新田義貞。
見どころがたくさんある中でこの構図はしっかりと提示されていた初回。

足利貞氏を詰問する長崎円喜

圧倒的な存在感と力。これから対する相手として戦いを挑むところまですら辿り着けない強敵感が凄かったです。

 
見返してみて長い大河ドラマの第1回目として場面の転換も多く、時間の流れ方も激しい大変な初回なのですがやっぱりめちゃくちゃ面白いです!

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