【太平記】第5回「あやうし、足利家」〜あらすじと感想
前回鎌倉の侍所に捕らえられた高氏。御家人最大の大名、足利家に北条が戦いを挑んだと見なされて鎌倉は騒然となったとの冒頭のナレーション解説。
連署の金沢貞顕に「高氏を何とかならんのか」と頼む貞氏。だけど円喜の力は強大でどうしようもないと貞顕。仕方なく執権、北条高時に「お力を賜りたい」と頼む。
「幕府の繁栄を我が喜びとしひたすらそのためにあい努めております」と挨拶する貞氏に対して「あっそう」と返事する高時が印象的です。
高氏を何とかしてほしい貞氏に対して高時は「父の貞時は何事も公平でなくてなならぬ」と言っていたとのこと。しかし高氏の件に関しては「円喜に問うがよかろう」とのこと。
えー、あなた執権でしょという感じですが、改めて長崎円喜の権力の大きさを知らしめる場面です。
帰り道に円喜に遭遇「執権殿になんのお願いじゃ?」と扇で貞氏の胸をぽんぽんされてまたまた意地の悪い内管領殿です。
弟直義は武装蜂起する気満々で貞氏の帰りを待っていた。血気盛んなこと。
貞氏は清子に「長崎殿に手をついて慈悲を請えば、少しは道が開けたかもしれん、それが出来なかった。20年やってきたことが出来なかった」と打ち明ける。「慈悲を請うてそれで安穏に暮らせるならば、なぜ手をつかん」と自分を責める貞氏。貞氏の今まで耐え忍んできた無念さが滲む。
貞顕の導きで牢に繋がれた高氏と再開する貞氏。無念さと捕らえられたことを詫びる高氏。貞氏は「直義は蒙古でも襲来してきたような騒ぎ」と軽口も交える。高氏は「裁きに合点がいかぬときは牢を蹴破って出て、鎌倉と一戦に及ぶ」と告げ、貞氏は「決して見殺しにはせん」と高氏に告げる。
鎌倉に護送されてきた日野俊基を見守る花夜叉と一座。藤夜叉は足利高氏が捕らえられていることを知り、そして花夜叉は藤夜叉が高氏の子を身ごもっていることを悟る。
そして高氏は日野俊基との密会疑惑を円喜の子、長崎高資に厳しく詰問されていた。毅然と反論していくものの、日野と足利高氏が佐々木判官の屋敷に逃げ込んだことを知る証人がいると告げる。その証人は佐々木判官その人であった。その判官本人が質疑の場へ登場。さすがに焦る高氏
実は佐々木判官は執権の命で京都で謀反の企てを探っていたスパイだったという。その時日野と共に自分の館に足利高氏が来たと証言。「その足利とはここに居る足利だろう」と問う高資に対して、「いや違う!それがしが会った足利は身の丈6尺はあった大男。かかる不思議のあることよ!あの足利は偽物であったのか!」と狼狽の大芝居!
ここで足利を潰したかった長崎父子の裏をかく佐々木判官の大芝居。高氏も九死一生の場面でした。
評定が終わった後、円喜は苦い顔で判官に「話が違う。我らと同心だと思っていた」と問い詰めるも、「わしに話が出来るのは執権殿だけ!」と言い放つ。
天下の長崎円喜に喧嘩を売る佐々木判官がカッコいいシーンです。
その後、登子の兄赤橋守時が高氏を訪ねる。
「東国の武士が京都で数日過ごすだけで公家に肩入れすることは、あるかも」と語る高氏に対して守時は「鎌倉は長崎だけではない」と話す。守時としても長崎円喜の専横を心良く思ってはいない様子。
帰宅した守時は妹、登子に「高氏は、嫁に行っても良いと思う人物か」聞くと「はい!」と即答。
その答えに守時は、長崎円喜の手から足利を、高氏を救う決心をする。
そこに奥州で乱が起こったとの報告が入る。安東季長と安東季久との相続争いに端を発した戦いであった。
足利家では高氏をどうにか救えないかと話し合いをしていたが、そこに突然、新田義貞が訪ねてくる。奥州の戦乱に関して奥州の安東十郎を携えてやってきた。
義貞は貞氏に、いま足利が立てば北条を奥州と足利の挟み撃ちに出来ると語る。足利の窮状を見越して間接的に奥州の乱に乗じての蜂起を促す新田義貞の差金であったが、そのことを問われた義貞は、「新田は貧乏御家人。力もなければ思うところもない」ととぼける。
鎌倉での評定。
後醍醐天皇から勅命というか詫び状が届く。長崎高資が「朝廷ごとき!」と嘲り開封しようとするが、帝から武家への書状という前例のないことに対する礼儀として、封を開けずに返すことになった。
赤橋守時は奥州の戦乱の原因は幕府の腐敗、安東一族から賄賂を受け取っていた幕府の要人が原因であると話し出す。これには北条高時も「誰じゃ!」と怒りを見せる。賄賂を受け取っていたのはどうも長崎高資の様子。さすがに長崎円喜も動揺を隠せない。
「他を疑う前に自らが正しくあらねばならない」という赤橋に対し何も反論できない長崎父子。
足利が敵になれば幕府も無傷では済まない。敵にするよりも味方として固めるために、足利高氏は放免にすべしという赤橋守時、金沢貞顕。
その意見で評定はまとまった。高時は「疲れた…任せるから、穏やかに…」とうんざりな様子。
評定が終わった後円喜は高資に「私利私欲で内管領が務まると思うかこの愚か者が!」と激しく扇で打つ。
「北条家は今傾いておるのじゃ!」「北条が崩れれば幕府も倒れる。そうあってはならぬゆえ血を流してきたのがわからんのか!このうつけ!」
一貫して敵役の長崎円喜ですが、円喜なりに幕府を保つために私利私欲で動いているわけではないことが知れる場面です。
そして「高氏無罪放免」の知らせを持って金沢貞顕が足利家を訪ねてくる。
貞氏もぴょんと手足を広げて小さなジャンプで喜びを表現。高氏は「シャー!」と叫んで明るい表へ。
これで京都から続いた高氏の嫌疑と長崎父子からの追及は幕を下ろしたのでした。
高氏の危機はどうにか終結しました。
貞氏の控えめな喜びようとそれを眺める清子。
そして高氏の派手な喜びようが良い対比でもあり綺麗なこの回の最後の場面でした。
今回の主要な流れは高氏が無罪になるまでのそれぞれの思惑ですが、判官、高時、円喜、高資の人となりや、守時の内に秘めた憂慮。義貞の動きなど、相当に深掘りされていました。
さらに藤夜叉の懐妊も物語にとって超重要な内容。濃かったです。
今回のハイライト佐々木判官の大芝居!
嘘ついてますよっていうとぼけた場面でもあり、高氏の窮地を救う大事な場面!
その後に長崎円喜に喧嘩を売るシーンも含めて判官がかっこいいシーン。
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