【太平記】第10回「帝の挙兵」〜あらすじと感想
オープニング前の解説で元弘の変が始まったことの説明があります。
後醍醐天皇が笠置山で挙兵しいよいよ時代が動き始めました。
京都の六波羅軍が笠置山で敗れ鎌倉幕府は大軍を鎌倉から笠置山へ送りこみこの乱の収束を図ることを決めた。
北条高時にその決定を求めるべく長崎高資が訪ねる。足利貞氏の供養のため写経をしている高時。
高資が伝えた鎌倉より送る将の中に足利治部大輔高氏名があることが引っかかる。高資は「高氏がこび出陣要請にどう答えるかで足利の様子を見る」とのこと。
高時の「そなた(高資)や円喜ほど足利をイジメ抜いた者はおらぬ」や、喪中の足利に出兵を要請することに引っかかるあたりやっぱりこの高時は単なる暗君ではないことがうかがえます。
足利への出陣要請は、執権の赤橋守時が自ら足利館へ出向いて行っていた。即座に出陣を約束する高氏。足利の状況や心中を察して出兵決定を覆せなかったことに「面目ござらん…」と語る申し訳なさそうな守時。しかし守時が帰ると足利家中は弟直義をはじめ「出陣要請は嫌がらせだ!」と大モメ。
案じる登子に「兵を出すが戦をするとは申しておらん。笠置山を見にいくだけじゃ。矢は一本も撃たん」と話す。
登子が実家の赤橋家に戻った際にこの言葉を守時に伝えると「矢は一本も撃たん」という高氏の言葉に守時は怪訝な顔を見せる。
一方笠置山の後醍醐天皇は徐々に苦しくなる戦況。あまり武士も集まっていない。
かつて日野俊基から頼りになると聞いていた楠木正成なる武者はどうしたと千草忠顕に訪ねる。忠顕は楠木は名だたる悪党を平らげるなど凄い武将であるとは言うものの未だに連絡がないとのこと。
ここで語られる正成の武功は史料に基づいたものですね。
正成の人となりを知っている僧から、勅使を送れまば必ず笠置山へ駆けつける男と進言されるが、公家達は「帝が武者ごときに使者を送るなど古今に例なし」とあなどる。
ここで古典太平記のエピソードが語られる。
後醍醐帝が見た夢で、菩薩の使いの子供2人に「大樹の南の木陰に天子(天皇)が座る玉座がある」と告げられる。
「大樹の南」文字にすると木の南と書いて「楠」
楠木正成を何としても味方にすべしとの菩薩の使いからのお告げの夢であったと読んだ後醍醐帝は、万里小路藤房を呼び今見た夢を説明した。勅使として向かい「楠木正成を特命せい!」と命じる。
楠木の領地では笠置攻めのためと称して北条の略奪が横行していた。正成が「帝にも幕府にもどちらにも付かない」と決断したため、正成の弟、正季は北条からこんな目に遭わされていると怒り笠置山に馳せ参じるために出て行ってしまう。
正成は子の多聞丸を連れてやってきた妻の久子に「愚かなことじゃ。200の兵で向かってもみな討たれてしまう」と正季の出陣を嘆くも、久子から今からでも追いかけて説得するように言う。「そうじゃな…!」とうなずいて急いで館を出るが、そこに万里小路藤房が勅使としてやって来る。
正成も「わしの館になぜ勅使が…」と驚愕の表情を見せた。
勅使を迎えた楠木館では楠木の侍女達がやってきた中納言を見てヒソヒソ…「高貴な万里小路藤房卿を拝せるなんて夢のよう!」と殿上人に興味津々。
「中納言ってどんな人?」「中納言と言えば…小納言の上、大納言の上です!」という楠木家の侍女たちのやり取りはコメディ要素があまりないこの太平記にあってとても楽しいシーンです。
コメディの演出は大河ドラマによってはたくさん入っているものもありますが、当時の人間の反応に想像を寄せて入れらたこういう演出は面白いですね。
万里小路藤房は帝を助けるため笠置に出陣するように正成に言うが、正成は畏れ多くも、しかしハッキリと「迷惑」と一蹴。然り藤房は後醍醐帝が見た夢を語り、楠木を待ち侘びていることを伝える。「この藤房、夢など信じぬ。信じぬが、夢にすがらば主上のお命は…頼む」と涙を浮かべる藤房。
ちなみに万里小路藤房は江戸時代の儒学者安東省菴によって「日本の三大忠臣」に数えられる人物(後2人は平重盛、楠木正成)後に建武の新政を批判し出家するのですが、忠臣に相応しい後醍醐帝を案じる大和田獏さんの好演でした。このドラマの登場シーンが少ないのは残念ですが。
場面は変わり館で庭を見ながら久子と語らう正成。久子は風習として嫁入りの際に柿の木の苗を持ってきて楠木の館の庭に植えていた。
大きくなった柿の木を見て当時のことを懐かしく語る久子。
正成は「男はこう言われる。木を長く活かして使え。己の手で切るような真似はするな」と答える。「戦は女や子供も巻き込むそれが嫌」だと
正成の迷いに対して久子は「帝直々のお声がかりとは武士の誉。殿の誉は久子の誉、家門の誉。木のためにお迷いなさいますな!」そう言うや斧を持ち、柿の木に一太刀を入れる。
我に返った久子。その様子に正成は「長い戦になるぞ。長い戦に、多聞丸を頼む!」と語った。
家や家臣領民を巻き込みことは確実ながら、勝つ見込みのない戦。しかし正成の頭の中にあった重いものは久子の斧の一太刀で晴れた模様。
翌日楠木党を招集して笠置に駆けつける正成。
ナレーション「楠木正成が立った。河内の片隅で立ち上がったこの土豪が、後に大きく世を変えることとなる」
そして高氏は鎌倉より西上中。「笠置はまだ遠い」との語りで幕を閉じる。
今回は正成が出陣するまでの決断までが丁寧に描かれました。いよいよ楠木正成が歴史の表舞台に登場してきます。
後醍醐天皇の「夢」の話がしっかりと描かれていてとても素晴らしい回だったと思います。
今日のハイライト
楠木家の侍女たちのやり取り
緊迫した舞台の微笑ましいパート。中納言は彼女たちにとっては大スターみたいですね!
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